離婚により脳卒中の発症リスクが1.26倍増加することを、国立がんセンター健康研究センター長の津金昌一郎博士がStroke誌(2016:47:991-998)に発表しました。
これは、1990年と1993年 全国9カ所の保健所管内で暮らしている既婚の40-69歳の男女約5万人を、15年間追跡調査した結果から導き出されました。調査開始5年以前から配偶者と同居した方が配偶者と別れて暮らすことで、脳卒中発症率が変化するかを調査した結果です。離婚ないし別居の有無についてのみ注目しての結果です。
さらに条件をしぼって解析しています。こどもとの同居の場合、「離婚してこどもと非同居」が男性で1.10 女性で1.15であったのに比べ、「離婚してこどもと同居」は男性で1.44 女性で1.45と有意に高かったことを報告しています。親としての役割が影響を与えているのでしょう。
親との同居では、「婚姻状況が変化せず親と同居」群に対して「離婚して親と同居」の脳卒中発症では、男性0.96 女性1.33であり、女性に高い結果がでています。男性では親との同居がリスク軽減に働いているようです。
就労の関係では、男性はほぼ就労継続で比較なし 女性は就労中における離婚の前後でほぼ同じ、無職の離婚では前後で2.98と明らかな増加がみられたそうです。
この数字だけで単純な結論は出ないでしょう。社会環境も考慮に入れるべきですが、面白い数字なので取り上げました。
(文責 院長・若杉 直俊)