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食物アレルギー検査の新潮流

数年前東京三鷹でおきた給食によるアレルギー関連の事故は,皆様の記憶に残っていることと思います。食餌アレルギーに関しては、その診断も難しく治療も突然のため、医療機関でだされる携帯型注射器も十分に使用されないケースも目立ちます。
 それらの事故を防ぐためには、食餌アレルギーがある場合それをいかに除去するか、あるいは減感作させるかが重要です。除去の場合は医療機関と学校給食関係者との緊密な連携が大切で、減感作の場合は厳密な観察下での治療法が重要です。
2016年6月17-19日開催された日本アレルギー学会で、同愛記念病院小児科の白川先生は新しい減感作療法 経皮免疫療法(EPIT)の13例を報告し、よい成績が得られたことを報告しています。この療法は、Dupontによりすでに報告されていますが(J Allergy Clini Immunol 2010:125:1165-1167)、世界的にはあまり行われていません。むしろ経口免疫療法(OIT)が広く世界的に行われています。
EPITは食事内容を皮膚に貼り付け、徐々にアレルゲンに慣れさせる治療法で、OITはごく少量から食事を経口的に摂取させ、徐々に増量し減感作をはかるものです。OITに関しては別の機会で解説しますが、副作用の危険はOITのほうがはるかに高いようです。EPITの副作用は13例中皮膚が赤くなるなどのほかは、全身的な副反応はなかったとのことでした。白川先生はOITも実施していますが、OITが初めから導入できない症例や、継続出来ない例にEPITが有効であろうと結論づけています。まだまだEPIT施行施設は少ないと思いますが、ご参考までに。(文責 院長・若杉 直俊)