このところ筆者の都合でこのコーナーが途切れていましたが、またすこしずつ皆様に新しい情報をとどけるべく再開します。
2017年8月 国立がんセンターでは、以前に報告したマイクロRNAによる早期癌診断技術の臨床的研究を開始する旨の報道がありました。臨床研究にはまず研究室の試験管レベルの実験から始まり、動物を対象に用い、最後にヒトへの応用をはかるのですが、その段階にいたって、2020年までに実用化に結びつけるとのことでした。癌の広がりや解剖学的位置づけまでは分かりませんが、早期発見に結びつく成果がすぐそこまでと迫っています。日本の癌医療も大きく様変わりするでしょう。
次にピロリ菌の話題ですが、オーストラリアのマーシャル博士がピロリ菌と胃病変の関係を解明しノーベル賞が授与され、はや10年がたちました。日本でも4000万人といわれる感染者がいますが、胃潰瘍や慢性胃炎の症状がある方は除菌が必要です。ただし、除菌には消化器病の専門医の受診が必要で有り、必ずしもすべての陽性者を対象とはしません。
国際共同研究グループが国際医学雑誌 Gastorenterology(2017;153:pp420-429)に発表した論文によると、世界の半数以上がピロリ菌に感染していることが推計されるようです。下水道の不備なアフリカが70.1%と最も高く、マーシャル博士のいるオセアニアが24.4%と最も低かったとのことでした。国別では、スイスの18.9%からナイジェリアの87.7%まで大きく差のあることが判明しました。世界人口73億人のうち、実に44億人が感染していることになるそうです。
日本でも中高年者を中心に高い陽性率が知られていますが、胃癌検診を受診したうえ症状陽性の方は除菌をすることで、胃癌の発生を抑制していくことが重要です。
(文責 院長 若杉直俊)