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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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筋萎縮性側索硬化症

【筋萎縮性側索硬化症】
 冒頭の病気についてお話します。ネットやニュースで有名人が水をかぶるシーンをみることがあります。アメリカのオバマ大統領や大富豪ビルゲイツ レディーガガも参加し、日本のノーベル賞医学者 山中教授も水をかぶっていました。これは、アメリカのプロゴフファー クリス・ケネディーが始めた運動です。筋萎縮性側索硬化症(以後略してALS)と闘う親族を持っており、彼はこの病気に対して啓蒙をはかるとともに、治療法の研究のため募金をすすめているのです。
 それではALSとはどんな病気でしょうか。ALSは神経の難病で筋肉を動かすための神経細胞(節前性線維)が遺伝的に萎縮し、その結果筋肉が衰え、最終的には呼吸すら出来なくなる病気です。人口10万人あたり0.4-1.9人発病します。有名人では 宇宙物理学者ホーキンス博士 中国の巨人・毛沢東 ルー・ゲーリック病とも称されるその由来の大リーグ強打者 ルー・ゲーリックもかかった病気です。病気の進行は様々ですが、ほとんど数年でねたきりになります。
 日本でも1000人程度の患者さんがこの病気と闘っています。初期症状は、手足の力が入らない、発語がうまくゆかない、よく転ぶようになったなどという方が多いようです。和歌山の熊野地方に患者さんが集中する地区があることが知られていますが、原因は不明です。この病気の診療科は、神経内科であり検査では筋電図が必要になります。このほかにも神経難病は数多くあり、いまだ解明出来ない病気がほとんどです。
 iPS細胞を用いた研究は、そのような難病の発症メカニズム解明にも応用され、さらに萎縮した神経細胞の再生医療にも大いに期待を抱かせてくれます。世界中の多くの患者さんの福音となることを望んでやみません。
(文責 院長・若杉 直俊)