【SFTS】
デング熱やエボラ出血熱は前の回でも紹介しましたが、ウィルス感染症が世間の注目を集めています。SFTS(重症熱性血小板減少性発熱症候群)も密かに国内で広がっているウィルス性感染症です。
SFTSは、マダニがベクター(感染を媒介する動物)です。はじめ、中国で報告され 2年前から西日本を中心に国内でも80名以上の患者が報告され、3割ちかい致死率を示す恐ろしい病気です。普通、マダニは森林でイノシシやシカなどに寄生して吸血する虫ですが、最近の開発でそれら哺乳類がヒトに近づく機会も増え、マダニも広がりあわせてSFTSウィルスの侵入もゆるしているのです。散歩中のイヌの皮膚にマダニが寄生してそれがヒトに感染する例も報告されています。ヒトからヒトへの感染はありません。
症状は、数日の潜伏期間後 高熱・頭痛がまずみられ 血液中の白血球や血小板が減少し出血症状がみられ、これが死に至る臓器不全をおこすのです。根本的な治療はありません。ワクチンもありません。埼玉県内ではまだ報告がありませんが、マダニは県内どこにでも存在しています。ひたすら対症療法および輸血を行うものの、救命率は7割ほどです。マダニは吸血すると3mmほどの体長が10倍近くになり、見た目にもはっきりします。マダニの唾液には麻酔作用があり痛みはありません。そのマダニをむしりとることは避けねばなりません。皮膚科を受診し、丁寧に切除する必要があります。
マダニも蚊も刺されない工夫が必要です。森林などへでかけるときは体をなるべく衣服で覆い、虫取りスプレーなども必需品です。それでも熱が出た場合は医療機関受診が必要でしょう。
(文責 院長・若杉 直俊)