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自閉症スペクトラムとADHD

【自閉症スペクトラムとADHD】
 10月にNHKで放映された 東田直樹氏を紹介した番組は、一般の方々の自閉症理解に大いに寄与したようです。自閉症は、1943年レオ=カナーによって報告された①言葉が出ない②人とのコミュニケーションができない③こだわりが強い などの特色をもった一群のこどもたちをさしたものでした。しかし自閉症ないし自閉傾向のあるこどもでも、一見奇妙な行動をとるもののきいてみれば理にかない 記憶力もすぐれたグループもありこれをアスペルガー症候群とよびます。東田直樹氏は、こどものころから何かの拍子にジャンプする事が多く、家族は不審に思っていましたが後年これはかれの喜びの表現であった事が判明しました。このように自閉症にはその表現型に幅があることから、現在は自閉症スペクトラムとよんでいます。
 一方少しも落ち着きがなく、よくけがをするこどもがいます。ADHD(注意欠落多動症候群)とよびます。脳内には興奮性と抑制性の神経回路がありますが、興奮系が常にまさっているこどもで 学習の場で問題になることが多く、学習障害児(LD)ともよばれています。実際小学校の先生で、自閉症スペクトラムやADHDの児童を受け持ち 一人では統率困難のためもう一人補助の先生の力を借りて学級運営を行っている例が増えているようです。それらのこどもたちに対して、医療では小児精神科医が、抑制系の向精神薬を投与や 行動療法にもとづく非薬物治療を行うなどします。しかしそれらのこどもすべてを異常と見なし、要治療者と考えるのは少しゆきすぎの感があります。そのためにも、多くの方が自閉症についての知識を持つ必要があるのです。
 最近は自閉症についての書籍もたくさん出版され、インターネットでは自閉症の児を持つ家族のホームページもたくさんみられます。わたしたちは困難を覚えている方々とも、共存していける世界を作り上げたいものです。(文責 院長・若杉 直俊)