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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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どうなる子宮頚癌ワクチン

子宮頚癌ワクチンの中止か 続行かが議論されて、1年半がたちました。厚労省には現在まで約2,500件の副作用報告が寄せられ、そのうち特に重いものが176例あるそうです。それらの因果関係は随時検討されるもののいまだ結論はでていません。そのほとんどが、全身の筋肉痛です。しかし痛みがおさまっても、一部の症例では眠りすぎや記憶障害等の異常もみられるようです。そこで 2014年12月10日厚労省と日本医師会は関係者を集めてシンポジウムを開きました。
 その際の意見では、対象年齢が多感な時期の女子生徒であることから心理的なものではないかという意見と、症状が接種後からはじまるので明らかにワクチンが原因であるという意見まで、ここでも議論百出し結論がでずに終わりました。しかし、その研究をしっかり行うことについては全員の賛同が得られました。
ところで子宮頚癌ワクチンは世界の58カ国が公費接種しています。デンマークなどの報告では、日本の副作用報告より3倍高い比率で患者報告がありますが、実施は続行されています。さらに、実施諸国は統計的に子宮頚癌の数の低下は確認できていませんが(まだ接種が10年ほどの経験であるため)、癌の原因のパピローマウィルス保有率は低下しているとの報告もあります。以前から、日本はワクチンについては後進国との認識がもたれています。一人でもワクチン接種による副作用を出さないことが重要か、病気そのものの撲滅が重要か、もちろんその両者が達成できることが理想ですが、医療関係者だけでなく一般の方も含めた議論が必要なのかもしれません。このワクチン接種既往者で、症状が気になる方、その相談を希望する方は、厚労省のホームページをご欄ください。連絡先が記載されています。(文責 院長・若杉 直俊)