線虫は動物に寄生して子孫を増やす生物で、ヒトにつく回虫やサバなどにつくアニサキスがその仲間です。そのアニサキスが胃癌患者に感染した際、内視鏡で腫瘍の近傍に存在している事実を一人の医師が発見しました。アニサキスが癌を判別する能力があるかもしれないという発想のもと、線虫を研究している九州大学の広津崇亮博士に相談したそうです。広津博士は、研究室での実験からそれを癌の診断に応用することに成功して、ネットでも話題になりました。また5月9日のテレビ朝日 夏目と右腕 の番組内でも紹介され、視聴した方もいるでしょう。
彼の研究によれば、線虫はヒトの癌細胞から出る微量な物質の匂いをかぎわけるというのです。そしてこの研究が実用化されれば、尿1滴で癌を早期に診断できると述べています。なんとなくうさんくさい感じもしますが、癌患者をかぎ分けるイヌがいることが知られています。イヌの嗅覚はヒトの1万倍以上といわれています。その点では、がん特有の物質に匂いがあっても不思議ではありません。ただし、まだその物質が化学的にどの様な組成であるかは不明だそうです。ましてや下等な生物の線虫にその能力があるか不明ですが、それが事実ならとても面白いと思います。
広津博士は理学部の出身ですが、さまざまな学問分野の人材が医学の世界に飛び込んで人類の夢である癌の克服に力を貸していただけることは、患者さんにも医療関係者にもおおいに励みとなることは事実です。 (文責 院長・若杉 直俊)