長時間労働の弊害は種々いわれており、不眠・全身不調・うつへの引き金等労働関連疾患として昔から注目されています。最悪の場合は自死へとつながる例も多く、ここ数年はやや減少傾向を示していますが、日本はOECDのなかで韓国とならび自殺率の高い国とされています。
一方、脳卒中や心筋梗塞などの脳血管・循環器疾患と長時間労働の関係も指摘されていますが、科学的に確かなデータがあまり示されていませんでした。ロンドン大学のMika Kivimaki医師は、それまでに発表された約50万人のデータを含む17件の研究から以下のような結論を得たことをLancetに報告しています。
①1週間の労働時間が35-40時間の群と55時間以上の群を比べると、心筋梗塞などの循環器疾患による死亡が13%高い
②同じく脳卒中のリスクが33%高い
③特に脳卒中の場合、労働時間が長くなれば長くなるほど死亡率上昇する傾向がある
ここでいう週55時間以上とは、週40時間労働として月の残業が60時間以上を意味します。日本でも長時間労働が続くと不眠や体調不良に注意しますが、その際の目安が月60時間を超え、3ヶ月の合計が200時間を超える場合健康管理者との面談が必要になる場合があります。今回の報告は恒常的に長時間労働が続く方を対象にしているので、年に1-2ヶ月ていど残業60時間超えがあってもそれは対象にしません。しかし、できれば定時出勤・定時退社であとの時間を家族の団らんや趣味に用いるのがもっとも理想であるのはいうまでもありません。(文責 院長・若杉 直俊)