【内視鏡施術】
かつて、手術衣をまとった外科医は病院の花形でした。古いお話で恐縮ですが、ベン・ケーシーといえばアメリカの外科医を主人公としたTV番組で、高視聴率をとっていました。メスさばきも鮮やかに、患者を助けるその姿を覚えている方もいるでしょう。しかし現代の外科手術は、テレビ画面をみながらおこなう時代になりました。
それは、かつてのように開腹して無影灯の下 メスをふるう時代から、腹部に内視鏡を差し込み 患部を除去する内視鏡手術が導入されてからの光景をさすのです。また早期胃癌のうち、粘膜にとどまる癌(ステージⅠ)や、大腸癌のうち、同じく粘膜にととまる癌
なら手術室に移動することなく、内視鏡だけで患部を取り除くことが出来るようになりました。実際、それらの手術を経験された方もいるでしょう。内視鏡手術のよい面は、開腹手術と違って患者さんの回復が早いことです。大きな術創をつくらず、美容面でもすぐれています。一方悪い面は、直接患部を視野におくことがないので 万一事前に予測した状態から大きく逸脱していれば、再度の開腹手術が必要になることです。しかし、現在では事前の検査の精度が増し CTやMRI・超音波などで、まるで患部を直接目にするがごとき画像がえられるため、そのような心配もほとんどありません。
さらに、ダヴィンチとよばれる最新の内視鏡手術機械があります。これは画像がインターネット回線などで専門医へ送られ、メスのついた内視鏡なども遠隔操作可能で なんと実際の手術医が遠くにいても患者さんは高度な手術がうけられる仕組みになっています。若いドクターたちは、それらの画像と手技を学んで経験を積んでいくのです。
ベン・ケーシーの颯爽とした姿はあこがれの的です。もちろん、従来の開腹による手術がまだまだ主流ではありますが、これからは機械を十分にこなす医師の姿がそれにかわっていくのかもしれません。
(文責 院長・若杉 直俊)