ガンの罹患が男性で2人に一人、女性で3人に一人の時代です。がんが身近になりました。早期発見早期治療が重要なのはいうまでもありませんが、不幸にして進行癌と診断された場合、最後の痛みのコントロールにモルヒネが使用されます。ところがモルヒネの使用は欧米ではガン以外でも用いられています。日本ではなじみがないのですが、神経難病特にALS(2014年8月26日のコラム参照)の痛みに使用されているのです。北里大学神経内科の荻野美恵子講師がインターネットでも、一般の方にわかりやすく解説しています。(www.als.gr.jp/saff/seminar49/seminar49_02.html)
ALSの末期の苦しさは、呼吸に関するものです。気管切開をした場合でも呼吸苦を訴えることがあります。その苦しみに対してモルヒネの使用が検討されるのです。同様に肺気腫の患者さんでも同様な苦しみが生じます。ところが日本では非ガン疾患へのモルヒネ投与は保険適応になっていません。さらに問題のが、多くの医師がこの点を考慮していないのです。
当院では在宅医療に力を入れているために、ガンの末期にモルヒネを使用することが多いのですが、当院でも非ガン疾患への使用経験はありません。人生の最後を苦しみの中で迎えることは、緩和医療の立場では厳に避けなければいけないことです。筆者としては荻野博士の問いかけを医療界全体で受け止めるべきと考えています。
(文責 院長・若杉 直俊)