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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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赤ちゃんとペット飼育

 前回もアレルギーの話をしましたが、子育て中の親御さんにペットの室内飼育を相談されたとき、多くの小児科医はその毛やフケなどがアレルギーをおこすため、なるべく避けるように指導すると思われます。ところが、最近興味ある記事が医学雑誌に掲載されました。
 JAMA Pediatr. 電子版(2015.11.2)によると、スウェーデンUppsala大学のTove Fall博士が小児65万人のデータを調べたところ、生後1年以内にイヌや家畜に接触した方が幼小児喘息発症のリスクが低下する傾向を見いだしたのです。その研究では、3-6歳群と6歳以上の学童群で、生後1年以内にイヌと接触したグループがそれぞれ31% 52%と喘息リスクが、非接触群に比べ減っているというのです。
 この研究がにわかに、乳児とイヌなどペットとの積極的な接触をすすめるものではありませんが、極端な清潔志向がアレルギー患者の増加をきたしていることは周知の事実です。寄生虫学で高名な藤田紘一郎先生も、その著書でその点を指摘しています。ペットを飼うことは情操教育上でも重要なことです。新たに得られたこの知見から いつかは乳児とペット飼育を積極的に考慮する時代が来るかもしれません。(文責 院長・若杉 直俊)