戦前、死の病と恐れられていたのが結核です。戦後、ペニシリンやストレプトマイシンの発見により、急速に減少しました。もちろん、現在でも新規の結核患者さんは年間数万人報告されていますが、今回話題の肺非結核性抗酸菌(NTM)症は、結核と似て非なる病気です。
肺に結核を疑う陰影があって、喀痰の培養やクオンティフェロンなどの結核検査をしても結核菌はなし、しかし咳も長引く場合この病気を考えます。実際喀痰培養で、この病気の菌が培養されます。数種類の菌が培養されますが、そのうち一番多いのがMAC菌(Mycobacterium aviumの略)でNTM症の90%を占めます。MACは通常、自然の土壌などに存在しなんらかの理由で呼吸器内に侵入してNTM症をおこします。ヒトからヒトへの感染はないとされています。
2015年11月18日第217回生命フォ-ラムで 結核予防会複十字病院の倉島篤行博士は、全国の呼吸器専門施設884病院のデータから肺結核が12.9/10万人 肺NTM症が14.7/10万人の新規登録患者があることを報告しました。諸外国でも、肺NTM症はアメリカで5.5 オーストリアで3.2(各10万人あたり)なので、日本は著しく高い数字であると指摘しています。
すぐには生命に関わらないものの、咳が続き呼吸も困難になるのが肺NTM症です。治療は、クラリスロマイシンを長期に内服することです。診断には呼吸器の専門科の受診が必要になります。みなさんも健診等で肺野異常が見られた場合、この病気を覚えておいてください。(文責 院長・若杉 直俊)