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地域医療介護法案

【地域医療介護法案】
 先の通常国会では、安倍首相の集団的自衛権問題提起で国民的な議論がかわされましたが、その陰で医療関係の重要な法案が成立しました。それが地域医療介護法案です。この法案の骨子は、2025年以降 団塊の世代が後期高齢者となり、医療介護に多くの資源が投入される事が予想されるなか、その事態にそなえる国の方針をさだめたものです。
 その理念は、高齢者の医療介護は地域でささえること、つまり地域包括ケアの構築をはかることです。地域包括ケアとは 耳慣れない言葉です。しかし、ここでうたっているのは高齢になり 医療介護が必要になっても、最後まで住み慣れた家・地域で暮らし 安易に入院・施設介護にたよらないというものです。あるいは 頼りたくても頼らせないというのです。その背景には、国がその分野への税金投入が今まで以上に出来なくなっている事実があります。具体的には、特別養護老人ホーム入居は要介護3以上に限定され、現在介補保険サービス利用者も 一定以上の収入があれば自己負担額が2割になることなどがほぼ決定しています。この改定は3年後の介護保険第5次改定時に決定されるでしょう。
 その態勢を作るには、現在よりも看護師50万人 介護士100万人の増員が必要とされています。オリンピックやデフレ克服も重要ですが、筆者にはこちらの方がはるかに重要な問題であろうと思っております。おそらく日本人の手では無理で、近隣の国々から看護師・介護士の手伝いをおねがいすることでしょう。かくいう医者も、在宅医療におおいに貢献しなければいけないのです。財源も重要です。予断はゆるされませんが、消費税の割合も諸外国並に15-20%になるでしょう。なりよりも、高齢者や社会的弱者への共助・公助そして本人の自助が必須となるのです。元気なうちから、健診等を活用して病気を予防し ねたきりにならない生活をめざすことが大事です。
 世界でも未曾有の高齢化社会がこの日本でおきようとしています。いまから、本格的な対策が必要なことは 論をまつまでもないのです。
(文責 院長・若杉 直俊)