【加齢黄斑変性症とiPS】
新聞でも報道された、目の病気 加齢黄斑変性症(以下AMDと略す)の最新手術についてお話します。まずAMDですが、欧米では成人の中途失明の原因の第1位 日本では4位です。しかし日本でもここ10年で患者数が2倍に増えています。従来AMDにはレーザー療法 光線力学的療法などの治療法が施され それなりの結果をだしています。最近では抗血管内皮増殖因子(以下VEGF)を眼球内に注射する方法も行われています。ところが9月12日神戸で行われた治療法は、世界初のiPS細胞から培養した網膜色素上皮を利用して AMDを移植で治療する手術でした。
神戸市民病院の栗本 康夫博士が執刀しました。iPS細胞から培養したシート状の網膜色素上皮を、痛んだ網膜にのせて生着させる手術です。過去ヒト胎児の網膜を移植した手術もありましたが、拒絶反応で失敗。患者本人の網膜を培養した研究もありましたが 成功例が少なく標準療法にはなり得ませんでした。今回治療を受けた70歳代の女性は、何回も抗VEGF注射を受けるものの 視力0.1以下で回復せず、今回の手術を決断したそうです。経過は順調で、博士は今後同様な症例6例の治療を予定しているそうです。iPS細胞の実際の治療への導入がこれほど足早になるとは、正直意外な感想をもっています。
山中伸弥教授をはじめ、多くの医学者が発見し実用化を研究するこの分野の成功例が、つぎつぎと報告されることを期待してやみません。
(文責 院長・若杉 直俊)