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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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小児慢性疾患のフォローアップ

 2015年1月の日本医師会雑誌の特集は、慢性疾患をもつ子どもの成人への移行問題があげられています。医療の進歩で、先天性心疾患 小児癌 神経疾患等の生命予後がよくなり、高校生以上の方々がいつまでも病院・診療所の小児科外来に通院することが困難な状況になっています。しかし、医療側の小児科・内科間の意思伝達の齟齬 患者本人および家族が主治医の交替を嫌うこと そもそも稀少な疾患の場合に内科に専門科がいない などの場合、15歳以上の方が乳幼児に混じって診療を受ける事態になります。
 小児期に担当した主治医が積極的に患者さんの一生を治療する意思があり、患者さんもそれを受け入れる場合はさほど問題はありませんが、心臓病などは頻度的には出生児の0.5%に異常が見られるためその患者数も多く、最近では医療側も成人先天性心疾患学会などが組織されそこに属する医師は、積極的に小児科から移行した成人患者をうけいれているようです。しかし、すべての内科循環器医がその対応をするわけではありません。疾患によっては、病院などにある医療相談室へ事前に問い合わせるなどの手続きが必要になります。また以前に栄養の項目で紹介したアミノ酸代謝異常症などは、稀少疾患であるため はじめに診断した小児科医が、おおむね成人以降も治療している例が多いようです。
 さらに成人以降で問題になるのは、患者本人の意識です。ただでさえ親に反抗する年代の思春期のこどもが、自覚的に自分の病気とむきあい 諸事情で変更された新しい内科診療医とその後の治療方針を話し合うのは、いささかハードルが高いのかもしれません。保護者をはじめ、こどもをとりまく友人・知人が励ましてはじめて移行が可能になるのではないでしょうか。診療中断でせっかく克服してきた疾患が悪化することがないように、われわれ大人が小児慢性疾患のこどもたちを暖かく見守りたいものです。
(文責 院長・若杉 直俊)