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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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腸内細菌の話

 人間の大腸のなかには、100兆個ちかくの腸内細菌がいます。先日NHKでも腸内細菌についての番組が流れていました。その中で報道されていたのが、①腸内細菌と肥満の関係 ②臆病か積極的か性格までも決定する事③免疫疾患に関与すること④寿命まで腸内細菌の違いで変わること などがあることを マウスの実験で証明していました。これらの知見はここ10年以内にわかったことのようです。
 胎内にいるヒト(胎児)の腸内は無菌状態です。産道をでて数時間で腸内細菌が生じるとされています。腸内細菌が、生存そのものにむすびつく動物はコアラです。コアラは、母親の糞を食べます。その腸内細菌がコアラの主食 ユーカリの分解に絶対必要なのです。ヒトではこれほど顕著な病気との関連はわかっていませんが、ある種の感染症で抗生剤を長期に使用し、腸内細菌のバランスが乱れクロストリジウム・ディフィシルが過剰に増殖する事があり、これが壊死性腸炎を起こすことがあります。アメリカで、この疾患の治療に体内の便を正常者の便と全部取り替える治療がなされました。それにより、壊死性腸炎が治癒したことが報告されています。
 NHKの報道ではまだマウスの実験段階ですが、ヒトの性格改善のために便の交換療法がゆくゆくでてくるかもしれません。実際、内視鏡を用いた消化管疾患の応用が検討されているようです。しかし、それ以上に現代の私たちにとって必要なことは、よい腸内細菌叢をもつことです。繊維質の多い食事 オリゴ糖を含む食事内容 ヨーグルトの摂取などがすすめられています。実際 ヨーグルトを多く摂るグルジア地方の人々は、長生きであることが知られています。(文責 院長・若杉 直俊)