朝目が覚めて、夜眠くなる。人間の1日のサイクルです。人間にとって1日の時間サイクルは、自然放置すると約25時間です。これが24時間にリセットされるのは朝の光を浴びるときです。このことはさまざまな事象から証明されています。しかしその物質や生理機能が何か、多くの研究者が探索しましたが不明でした。
2015年3月4日のアメリカの科学雑誌ニューロン電子版に、筑波大学の柳沢正史教授が視交叉上核にある細胞群からニューロメジンSとよぶ物質が分泌され、この物質を生み出す細胞群が体内時計の働きを止めたり遅くしたりすることを報告しています。(毎日新聞3.5夕刊報道より)視交叉とは、網膜から脳へ情報を運ぶ視神経の通り道です。明るい・暗いを見極める視力の伝達ルートの近傍に、睡眠とも深く関係する体内時計細胞があることもよく理解できます。
柳沢博士は、以前に紹介した睡眠薬オレキシンの発見者でもあり、大変優秀な学者です。ノーベル賞候補にもあげられています。数年前東大医学部教授に選ばれましたが、その選考過程に疑問を感じて就任拒否をしたことでも有名です。一方2013年 その教授職に就任したのが上田泰己博士です。彼もいずれはノーベル賞を取る男といわれ、体内時計に関する研究をしています。爆笑問題の番組に出演したこともある学者です。その研究内容は別の機会に紹介しましょう。優秀な頭脳が競い合って、学問の進歩と医学の発展がすすむことを願って止みません。(文責 院長・若杉 直俊)