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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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Ⅰ型糖尿病

 11月25日 栃木で信じられない事件が報道されました。Ⅰ型糖尿病の7歳の男児が、祈祷師と称する男性に預けられ、適切な治療をうけることなくその短い命を閉じることになったのです。実は、同様な事件は過去何度も報道されています。
 男児の病気は1型糖尿病とよばれ、日本に1000万人以上いる成人型の糖尿病と違い、若年型ともよばれるタイプです。糖尿病は血液内の血糖が上昇し、この高血糖が血管を破壊しさまざまな合併症をおこします。代表的なものが、網膜症です。高血糖により血管の浸透圧が高まり、網膜出血や剥離をおこし失明します。次に腎症、腎臓は毛細血管の塊とも言えます。これが破綻して、腎機能低下 最終的には透析となります。最後に神経障害、しびれや運動機能低下もみられます。
 成人型の糖尿病は、まず生活習慣の改善です。運動と食事が大事です。それでもだめなら、血糖を下げる内服薬さらにインスリンの注射が必要です。ここ10年で糖尿病治療薬が飛躍的に開発され、さまざまな作用を持つものが使用できるようになりました。以前のコラムでも尿から糖を漏れ出させるSGLT-2薬の話題もとりあげました。さらに、ここ5ヶ月前から1錠のむと、1週間効果が持続する薬も使われ出し、低血糖の副作用もなくいずれこの内服のかたちが主流になりそうです。
 ところが1型糖尿病は内服薬では克服できません。血糖をさげるインスリンがほとんど分泌できず、インスリンの注射が必須となるのです。それをせずに、ただ見守るだけの今回の事件を検察が殺人行為と判断するのは、当然のことなのです。みなさんはこのような判断をすることはないでしょうが、このような不幸な事件が起きないよう、病気と判断されたら納得いくまで、医師と相談してください。(文責 院長・若杉 直俊)