日本の医学研究のたゆまぬ努力が、また今年のノーベル医学生理学賞・授賞にむすびつきました。大隅良則博士の快挙です。オートファジーの解明がその授賞理由です。でもオートファジーの言葉、このコラムの読者なら耳に残っていませんか。2015年9月19日に取り上げた話題です。
昨年のノーベル賞でも、大隅博士の偉業はその候補に取り上げられていたのです。1960年代に東大大学院で、細胞内で小器官の分解・再構成がさかんに行われることを見いだし、1972年ロックフェラー大学でその研究を続け、1993年にその遺伝機構を解明しました。当時は、細胞内のタンパク合成の機序に注目が集まっており、タンパク分解を主に研究する博士の分野はあまり注目されていませんでした。しかしそのような地道な研究が数十年経て、認知症やガン発症の機序の解明に役立つという、まさに基礎医学者の努力の賜といえるでしょう。
このニュースに関連して、東大の水島昇教授もよくとりあげられています。医療への応用に尽力されているからです。水島教授の父親も偉大な医学者でしたが、親子で立派な業績を上げている姿には拍手を送らざるを得ません。ちなみに、教授は筆者の出身高校の後輩ですが、これはあまり関係ないことでしょう。
今回授賞を逃した京大の本庶佑教授の業績も、近々記してみたいと思います。 (文責 院長・若杉 直俊)