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消毒とは何か

 102回目のコラムで、カブトガニによる毒素検査の話をしました。20世紀前半の医学は感染症の克服が大きなテーマでした。結核にしろ、マラリアにしろ世界規模の感染症にはいまだ人類は勝利を得ていません。しかし1つの個体におきる感染性疾患には、消毒法と抗生剤の発見とワクチンの開発により勝利を得ることが出来ました。
 そもそも感染症とは、ヒトにとって有害な微生物によっておこされる疾患です。その侵入経路は、皮膚その他への接触・食事などの経口摂取・傷口からの侵入・蚊などの媒介動物のからの刺入・不衛生な手術時など多岐にわたります。さらに病原微生物も、細菌・ウィルス・微細な昆虫等さまざまです。特に19世紀までの医療では、外科的手術は麻酔もなく消毒法も確立せず、危険な行為でした。
 19世紀パスツールは、腐敗の原因が汚れた空気中の細菌の仕業であることを究明しました。その後様々な感染性疾患の原因が細菌によって起こることが判明し、その原因菌の発見があい続きました。一方細菌の多くは数ミクロメーターのサイズであり濾紙で濾されるのに対して、濾紙を通り抜ける感染性微生物の存在が1892年ロシアのイワノフスキーにより発見されました。そして約40年後スタンレーによって電子顕微鏡でその存在を直接見ることが出来るようになったのです。それがウィルスです。スタンレーは1946年のノーベル医学生理学賞授賞者です。
 以上述べた細菌・ウィルスさらにその後同定されたクラミジア・リケッチア・原虫などの病原微生物を、可能な限り体内侵入阻止をするのが消毒です。細菌が高熱に弱い性質を利用した煮沸消毒は比較的初期から採用されています。アルコール消毒は、20世紀初頭ドイツの衛生学者ペッテンコッフェルが提唱し世界中に広がりました。活性酸素を働かせ、細菌やウィルスを死滅させるのが塩素消毒やエチレンオキサイドガスによる消毒です。ところで、これから到来する冬季の風邪予防のうがいも消毒の一つです。原始的な水分で洗い流す方法ですが、大いに効果があります。ぜひこれからは、うがい手洗いの励行を。(文責 院長 若杉直俊)