健康増進法で、衆人のなかでの喫煙が法律でしばられていますが、なかなか禁煙までいたらないのが現状です。自民党で検討されている受動喫煙禁止法も、店舗の面積に制限を設ける骨抜きが問題視されています。労働者が働く事業所でも、2015年6月1日から受動喫煙防止が事業者の努力義務となりましたが、まず喫煙者の意識が改革されない現状ではなかなか進んでいないようです。
浜松医大社会医学講座の中村准教授は、喫煙者の心理面(Health Locus of Control)に着目した新たな禁煙支援の取り組みを提唱しています。「いつかは禁煙したいと考えている人に対する禁煙支援は、健康以外の側面からのアプローチが重要」と述べています。
Locusof Control(LOC)とは、行動を統御する意識の所在(原因が自己にあるか他者にあるかを求める考え方)のことで、心理学の領域では有効な概念とされています。日本人の健康行動に関する帰属傾向を測定するものとして、日本語版HLC尺度も開発されています。
中村先生は、浜松市内の事業所で194名にアンケートを採り、喫煙状況(①吸っていない②吸っていたがやめた③吸っている)と喫煙者の意思(aできればすぐにやめたいbいつかは禁煙したいc禁煙したくない)を訪ね、25項目の日本版HLCのうちの5項目(1.健康でいられるのは、自分次第 2.健康でいるためには、自分で自分に気配りすること 3.病気がよくなるかどうかは、自分次第 4.自分の健康は、自分で気をつける 5.病気が良くなるかどうかは、自分の努力次第だ)を思わないからそう思うまで6段階で自己評価させて、相関を取りました。
喫煙者(61人33%)のうち、a出来ればすぐ(9%)bいずれ禁煙したい(61%)が合計70%で、a,b者はHLCの各質問にも3-6点のそう思うに回答が多くあり、特にa群はHLCの合計点も優位に高かったそうです。なかなか禁煙外来に行きにくい人にも、べつのアプローチたとえばインセンティブの付与・職場の環境対策などで、禁煙がはかれる可能性を述べています。(文責 院長 若杉直俊)