ディスレキシアという発達障害があります。学習障害のひとつで、はじめから字が書けないあるいは、読めるけれども書けないといったものです。我が国では漢字・ひらがな・カタカナを用いますが、その出現頻度はひらがな(読字0.2% 書字1.6%)カタカナ(読字1.4% 書字3.8%)に比べ漢字は6-7%と高いもののその機序はまだ不明です。(Reading and Writ 2009:22:755)
大阪医大 畑中マリ氏によると、漢字書字困難を訴える児では漢字の筆順が一般的ではない、あるいは一定でない症例が多いことを報告しています。対象は小学4-6年生の日本人38人で、定型発達が23人、発達障害が15人でした、漢字書字能力について「小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW)」を行い漢字書字検査(zスコア)、漢字筆順の定着水準については漢字模写課題を行い検討しています。
その結果、漢字書字成績と漢字の筆順正答率との間に優位な正の相関があり、すなわち正しく漢字を書くことで、正確な筆順が定着することを示唆しています。小学校の国語の授業では、正確な筆順を指導されますがそれには根拠があったのです。それに対してカタカナと書字には明確な相関性はみられていません。したがって、畑中氏はひらがな、カタカナと漢字では関与する脳機能が異なる可能性を示唆しています。
これからは筆者の想像ですが、米系おもちゃ販売店トイザらスのカンバンでRの文字が反転して、こどものほほえましさを出していますが、この書字障害は日本人の仮名文字の障害と共通するのではないでしょうか。日本人のローマ字の書字障害の研究はさらに少ないようです。(文責 院長 若杉直俊)