今年もノーベル賞の季節がやってきました。大村智博士 受賞おめでとうございます。前のコラムで大隅博士の話もしましたが、大村博士もガードナー賞の栄誉に2014年輝いています。博士の業績は、報道されたとおりオンコセルカ症の原因となるフィラリアの駆除薬の発見です。といっても直接薬を見つけたのではなく、抗菌薬を作り出しうる放線菌(2015年1月19日のコラム参照)の分離に成功し、薬の前駆物質エバーメクチンを発見しました。その物質を共同受賞者のW・キャンベル博士がヒトにも家畜にも効く物質へと合成して、イベルメクチンとして製剤化しました。
もう一人の中国女性科学者屠博士は、まだ中国が発展段階にある30年前に漢方のオウコウカから抽出したアルテミシニンが、マラリアに効果があることを発見し人類へ大きな寄与をしたことが受賞の理由です。世界で一番怖い生物は何?と聞かれた場合、それはライオンでもなくワニでもなく、蚊がそれであると答えます。それはマラリアをはじめデング熱や多くの感染症の媒介しヒトを死においやるからです。ちなみにオンコセルカ症はブユがその媒介動物です。キャンベル博士の属したアメリカのメルク社は無償でこの薬を流行地の人々へ配布しこの病気を撲滅しました。アルテミニシンもマラリアの治療に多いに用いられています。
人類に大きな貢献をした今年の賞は、例年とは異なりさわやかな印象を与えたようです。(文責 院長・若杉 直俊)