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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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新しい糖尿病薬

【新しい糖尿病薬】

 生活習慣病のうち、日本人の2050万人が罹患している病気が糖尿病です。すべてが厳格な管理の下治療が必要なわけではありませんが、実際このうち医療機関で治療や指導を受けている方が全体の約3分の1といわれています。
 糖尿病のうち、膵臓から分泌されるインスリンが突然分泌されなくなるのがタイプ1型糖尿病で、運動不足や肥満でインスリンが分泌されているのに血糖が高いのがタイプ2型糖尿病です。糖尿病患者のほとんどがタイプ2型糖尿病ですが、その治療は まず運動・食事療法です。過剰なカロリーの摂取をひかえ 適度な運動で血糖をコントロールする治療が必要です。その際に治療の目標となるのが HbA1cと食後血糖値です。それぞれ HbA1cで6.5%未満 食後血糖で180以下であれば 投薬はいりません。しかし 運動・食事療法実施でも HbA1c 6.5%以上 食後血糖180以上のコントロール不良群が、薬物療法の対象になります。
 糖尿病の薬には、①インスリンの分泌を増やすもの ②インスリンの効果を高めるもの③食事のうち炭水化物の吸収をおくらせるもの ④血糖を上昇させるホルモン=グルカゴンの働きをおさえるもの などがあり、これらは経口薬ですが、経口薬で効果が不十分なときにはインスリンの注射がもちいられます。なお タイプ1型の糖尿病は、はじめからインスリン注射が基本です。ところが 今年の春から 新しい薬が使われるようになりました。それはリンゴの皮から抽出された物質で 尿から多量に糖分を排泄させる作用を持っています。
 本来 糖尿病が悪化すると、多量の糖分が尿から出ていました。これは 腎臓は本来人体に必要な糖分を保持して、飢餓状態から体を守る働きがあるのですが、血糖が必要以上に高くなるとオーバーフローでたとえ必要な糖分でも 尿から過剰な分が流れでていくのです。血糖が 180以下なら普通 糖は尿に出て行きません。ところがその働きをおさえ 正常な血糖でも尿から糖分を排泄させるのが新薬で、この働きにより最高400Cal近くの糖分を体外にだす、つまり食事で400Calちかくダイエットするのと同じ効果が出るのです。このことが話題先行して、この薬を糖尿病ではない方がダイエットに使用できないかということがネットで噂になっています。もちろんそれはいけません。さらに この新薬には、投与中気をつけなければならないことが多くあります。たとえば 脱水に注意すること、尿路感染に注意すること、筋肉量の減少に注意することなどです。ほかにも新薬の思わぬ副作用が出ないとも限りません。現在では 医療機関で2週間を限度に処方して、それらの有害事象がないかを慎重に見極めています。糖尿病は まずは食事・運動療法が基本です。それでも血糖が高い方は、ぜひ医師に相談してください。
(文責 院長・若杉 直俊)

遺伝性乳癌

【遺伝性乳癌】

 皆さんも耳にしたことがあるでしょうが、米女優 アンジェリーナ・ジョリーが両乳房を癌の予防のため 切除しました。日本でも乳癌は増加しています。30代の若い患者さんも増えています。それらの乳癌のなかで、遺伝による発病が強く疑われるものがあることがわかってきました。それが遺伝性乳癌です。
 癌を引き起こす原因として たとえば子宮頚癌はパピローマウィルスが大いに関与していることが知られています。また胃癌の一部にヘリコバクターピロリ菌が関わっていることも衆知の通りです。この遺伝性乳癌は その原因に遺伝子が関与するというのです。もちろん 遺伝子の関与する癌は乳癌以外にも知られています。それらの遺伝子を総称して癌遺伝子とよびますが、乳癌を引き起こす癌遺伝子のうち最も強力なのが BRCA遺伝子で二つのタイプが有り それぞれ BRCA1 BRCA2とよびます。これらの異常がみられると そうでない方より明らかに乳癌が発症しやすいのです。さらにこの遺伝子は卵巣癌の発症にも関与しています。報告されている統計では 70歳までに BRCA1陽性者では39-87%が BRCA2陽性者では26-92%が 乳癌を発症するとされています。
 それでは この検査をどのように受けるべきでしょうか。この検査は 女性がすべてうける検査ではありません。肉親のなかで乳癌を発症した方が多い家系の女性が受ける検査です。あるいは 血縁のあるいとこやおばさんが陽性と判明した方が受ける検査です。検査は7ccの血液を採ります。費用は25万円くらいで自費扱い(保険がきかない)です。不幸にして検査陽性となった方は、乳癌の専門医とカウンセラーの指導の下 事後処理を受けていただくことになります。現在さいたま市では、乳癌検診を施行しています。気になる方は、検診を受けた際 この遺伝性乳癌について医師に相談するとよいでしょう。
(文責 院長・若杉 直俊) 

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