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若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

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免疫チェックポイント阻害薬

 ガン治療の主流は手術療法と抗がん剤による化学療法ですが、免疫療法といって癌細胞をヒトのもつ免疫の力で制する方法もあります。ガンワクチン療法も広い意味で免疫療法です。よくリンパ球を点滴するガン治療で患者を集める医療機関がありますが、せいぜい数ヶ月の延命効果しかないようで、今までは免疫療法にめだった効果は見られていませんでした。ところが昨年夏からガン治療に用いられているニボルマブ(製品名オプジーボ)は、皮膚癌の一種メラノーマに対して画期的な癌免疫治療効果を示しています。
 5月17日のNHK番組サイエンスゼロでも紹介されていました。この薬は、ガン細胞を排除するキラーT細胞の活性を持続させて治療する薬です。一方ガン細胞は自ら生き残るため、キラーT細胞の働きを止めるPD-L1という酵素をもっています。オプジーボはこのPD-L1を阻害する働きがあり、従来すぐ弱ってしまったT細胞を長く働かせ続けてガン細胞をたたくのです。ただし、すべてのメラノーマ患者さんに効果があるわけではなく、3-4割の方にのみ効果が見られます。(詳しくお知りになりたい方はhttp://www.ono-oncolgy/patient/ をどうぞ)
 一方同様な抗PD-L1阻害薬ペンブロリツマブ(日本では未発売)もメラノーマに効く薬として欧米で使用されていますが、肺癌のうち治療が困難な進行性非小細胞癌にも効果があることがUCLAのGaron博士により発表されました(NEJM 2015.4.19電子版)。いままであまり顧みられなかった免疫療法も、これからは手術・抗がん剤治療と肩を並べそうです。(文責 院長・若杉 直俊)

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