われわれの体を形作る細胞は、まるでそれ自体一つの宇宙のようにさまざまな形態と機能をもつ小器官から成り立ち、その細胞が臓器をかたちづくりその集合体としてヒトの個体が存在します。19世紀のドイツの病理学者ウィルヒョウは、病気の本質をみるには細胞の働きを理解することが大事だと強調しています。しかし、まだまだ細胞の働きには未知の事柄が多く存在します。
2015年医学の世界的な賞であるガートナー国際賞(カナダ)を受賞したのが、東工大特任教授の大隅良則博士です。なおこの賞は、山中伸弥博士も受賞しており、大隅博士は同じテーマで2006年の日本学士院賞も受賞しています。博士が研究の対象にしたのがオートファジーであり、この現象は細胞内のミトコンドリアがゴミものこさずきれいに除去される機構をさしています。ミトコンドリアは、細胞にエネルギーを供給する小器官です。オートファジーがうまくいかないと、特に神経の難病につながります。有名なのがパーキンソン病です。他にもSENDA病 Vici病などがあります。腸の病気のクローン病もオートファジーの異常が関与しているようです。
さらに、ガンの発生にもオートファジーの異常が関与していることが徐々に解明されてきました。9月13日のNHK サイエンスゼロでもその話題が取り上げられていました。興味のある方は、NHKのサイトを覗いてみるのもよいでしょう。多くの医学者の研究によりその成果が、実際の医療の現場に活かされ病気を克服する日もそう遠くないのかもしれません。(文責 院長・若杉 直俊)