医学の話題医学の話題

若杉院長が医学の最新の話題を取り上げて書きます。なお、記事に関するご質問、お問い合わせにはお答えしていません。

記事一覧

かかりつけ小児科

 日本では、2年に一度 保険点数の改訂があります。これは国が医療機関で行われるさまざまな医療行為に対して公的な値段を決める行為です。医師・保険団体(社会保険や国民健康保険)・学識経験者の3者代表が話しあい国民医療費の枠組みを決定します。そのなかで国がこれからの医療をどのように考えるかの方策が、新規医療行為の点数付けに示されます。
 平成28年度に導入された新規項目に、小児かかりつけ診療料があります。3歳未満の児に対して、かかりつけ医が日頃からの健康相談やワクチンスケジュールなどにも気軽に対応する制度です。岩槻では、ほとんどの乳幼児は医療費無料なので皆さんが窓口で負担を強いられることはありません。
 国はこれから子どもの数が減る中で、子育て中の保護者により気軽に小児科医と相談して欲しいという方策を込めたものです。ただしこの制度がすべての小児科医療機関で採用されることはないでしょう。それは診療時間外の電話対応が小児科医へ義務づけられているからです。そして患者はそのかかりつけ医を1つの医療機関に定めることが決まっています。当院は、以前から小児在宅も手がけており時間外対応もしています。国の趣旨にそって、この制度を受け入れる予定です。(文責 院長・若杉 直俊)

血圧計あれこれ

 高血圧症は別名サイレントキラーともよばれ、放っておくと様々な疾患をきたします。その管理に一役かうのが、家庭血圧測定です。量販店では7-8千円で購入でき、健康管理に大変役立ちます。しかし血圧計が正しく作動してこそ信頼がおけるのです。
 J Clini Hypertens(2016.2.8)に、国際高血圧連盟は電子血圧計に4つの基準を勧告した記事が掲載されました。それは、①メーカーは、外部検査機関で機械が正しい値を示すか検証すること ②管理する国は、検査基準を示し合格の証印をだすこと ③上腕で測定すること ④巻き付ける布(カフといいます)を個々人にあわせて選択すること です。
 血圧計のカフ幅は、普通上腕長の2/3とされています。また手首で測定するタイプは、その測定値が信頼できないことも勧告しています。何よりも機械が正しい血圧を示さない場合は、正常血圧を誤って高血圧と診断したり、その逆もありえます。メーカーおよび国が責任を持って機械を検査することが望まれます。日本国内で用いられるはかり(検量計)は、法律により2年に一度公的機関でチェックされることが義務づけられています。血圧計もそこまで厳密でなくとも、公的に検査されるべきだというのです。現在は、ほとんどメーカー任せとなっているのが事実です。
 血圧計を上手に使用して、さまざまな疾患を予防していきたいものです。(文責 院長・若杉 直俊)

小太りが長生き?

 昔から少し小太りの方の方が長生きするといわれてきました。実際20世紀初頭まで、結核やさまざまな感染症が猛威をふるっていた時代、体力のないやせ型の方々の方が短命でした。
 東北大学公衆衛生学教室の張博士は、65歳以上の1万2千人を対象に、BMIレベルと特定の疾患(認知症 脳卒中 関節疾患)の関係を調べました。それによると、BMI23未満では認知症による要介護レベルが高く、29以上では関節疾患による要介護リスクが高い事を報告しています(メディカルトリビューン2016.2.25)。したがって高齢者の至適BMIは23-29であると結論づけています。
 2006年から大崎市の65歳以上の住民を、BMIレベルで6群(-21、21-23,23-25,25-27,27-)に分けて調べたところ、上記の結果が得られました。脳卒中のリスクは、BMIの階層とあまり相関がなかったそうです。20-65歳未満ではBMIは20-24.5がよいとされていますが、高齢者は少し小太り(BMI23-29)の方が調査した3疾患でよい結果がでたそうです。ロコモ症候群でもやせて筋肉の衰えた状態はよくないとされています。参考までに。(文責 院長・若杉 直俊)

インターネットと医学情報

 2016.2.5 J Respir Crit Care Med オンライン版で、カナダトロント大学医学部のH.Fischer博士が、特発性肺線維症(IPF)に関する情報をインターネットで検索したところ、対象としたウェッブサイトの半数近くがIPFに適応がないかむしろ有害となる薬物の治療法を掲載していたと報告しています。
 検索したサイトは、IPF支援団体のサイトや科学情報サイト、業界・営利サイトなどIPFに関して情報を提供しているサイトです。決して個人的なサイトではありません。181のサイトで全体の48%に誤った情報が載っていたそうです。この傾向は財団法人や支援代替のサイトに顕著に見られたそうです。かつて、IPFにはステロイドやアザチオプリンが推奨されていましたが、近年呼吸器学会であまり効果なしむしろ薬剤の副作用に注意すべきとされるも、そのままの情報がアップされていたそうです。
 IPFは少しく専門的な疾患ですので、すべてのインターネット情報がそうだというわけではありませんが、みなさんもインターネットの医学情報については、くれぐれも注意してください。
(文責 院長・若杉 直俊)

特定健診について

 厚労省は2016年1月8日、国が目標とする特定健診受診率70% 保健指導受診率45%を達成した都道府県がゼロであることを発表しました。特定健診とは、40歳以上の国民が加入している保険組合の責任のもと、受診すべき成人病検診です。内容は生活習慣病である、高血圧・糖尿病・高脂血症、および貧血・肝機能障害・腎機能障害を早期に発見するための制度です。
 2014年度高い受診率を示したのが、①東京都(65.5%)②山形県(54.8%)③宮城県(54.5%)④富山県(53.8%)⑤新潟県(52.7%)。ワーストワンは北海道(34.6%)でした。特定健診で、腹囲が男性で85cm 女性で90cm以上あり、上記の項目中2項目以上に異常が見られると動機づけ支援の保健指導を受けます。しかしこれも任意であり、最も高い沖縄で33.9% 最低の大阪で11.8%でした。
 国は、この制度を通じて早期に生活習慣病を見いだし、早期指導のもと高血圧・糖尿病・高脂血症の要治療者を減らし、国民の健康と医療費の抑制を目指しました。5年ごとの見直しが行われ、2018年度には第3次計画のもと実施されます。その際、現在の成績をもとに検診項目の検討や実施方法の見直しがなされることでしょう。さいたま市でも、国民健康保険加入者で制度対象年齢のかたは、3月12日まで今年度の受診が可能です。未受診のかたは、ぜひ検討ください。(文責 院長・若杉 直俊)