以前に、癌の早期発見にマイクロRNAを用いる技術が2020年をめどにすすんでいることをお知らせしました。少しの採血で十数種の癌が早期診断されれば、癌の早期診断システムが大きく変わることが予測されます。一方マイクロRNA自体の研究もすすんで、マイクロRNAそのものが興味深い働きをもつこともわかってきました。
RNAとはそもそも何でしょうか。生物の細胞には、設計図であるDNAが存在します。そのDNAからタンパク質を作りだす際、DNAを映し出す鏡のようにRNAの鎖ができ これを転写RNAと呼びますが、これがタンパク質製造工場のリボソームに情報を伝え、細胞にとって必要なタンパク質を作りだします。そのRNAの切れ端がマイクロRNAであり、これがさまざまな働きをすることがわかってきました。たとえばメダカの発生で、受精卵が分割して徐々にメダカの幼生が出来る過程で、はじめに働く蛋白は母親由来のタンパク(酵素)が主役になります。ところがある程度成長すると、こども由来のタンパクが主に働き、母親のタンパクが不要になります。その際、こども由来のマイクロRNAが母親由来のDNAと結合し、ふたをして働きをとめることもわかってきました。
このDNA・RNAの働きは、単細胞生物から哺乳類など高等生物まで共通するものです。生物学の発見の中で1、2を占める重要な知見でセントラルドグマといいます(ワトソンとクリックは、この発見でノーベル賞を得ました)。この重要な知見の上に、さらにさまざまな発見が積み上げられ 現代の分子生物学が形作られてきました。それらが、ヒトの病気の克服に結びつく現代の医学の進歩にはおどろくべきものがありますね。(文責 院長・若杉 直俊)